東洋医学の治療法とは?

Pocket
LinkedIn にシェア

今回は、東洋医学の治療法について以下の内容でお伝えします。

  1. 鍼治療
  2. 灸治療
  3. 手技療法
  4. 漢方

目次

1、鍼治療とは?

1−1、鍼治療とはホメオスタシスを賦活させる!?

人間の身体は刺激を与えると、その部位を守ろうとしたり、逆に興奮状態にあるものを鎮静化したりする性質があります。これを「恒常性維持機能」または「ホメオスタシス」といいます。

鍼治療は、そうした身体の反応を応用し、身体の表面に機械的な刺激を与え、病気の治療や予防を行います。特に経穴から経絡を刺激し、その経絡に関係する臓腑や気血津液の変調を調整して正常な状態に戻す治療法は、東洋医学独特のものです。

もともとは、経験療法から始まったものですが、そこに「陰陽論、五行論、気の思想」などが加味され、体系化されました。現代では自然科学的なデータも集積され、より有効に治療を行うため、欧米などでも臨床試験が行われています。鍼の治療効果は、灸も含めた鍼灸治療全般にいえることですが、日本、中国、韓国などのアジアだけでなく、欧米などでも採用されています。

近年では、NHI(米国国立衛生研究所)が、病気に対する鍼灸療法の効果とその科学的根拠、西洋医学の代替治療法としての有効性を発表したこともあります。また、WHO(世界保健機関)は鍼灸治療の有効性を認めた病気として、以下の多くの疾患を挙げています。

    <一覧表>

1−2、鍼の主な効果3つ

鍼治療は、経穴への刺激から経絡を通じて臓腑の変調を整えたり、筋肉に刺鍼して筋緊張を緩和させます。灸もほぼ同じ効果を持ちますが、鍼は温熱刺激ではなく機械的刺激を与えます。

  1. 経穴への刺激が経絡を通じ、臓腑や気血津液の変調を整え、正常な状態に戻していく。
  2. 鍼には筋肉に直接アプローチする事で、筋肉を緩めて筋肉痛などの痛みを緩和します。
  3. 神経を刺激し、神経痛症状を緩和させたり、交感神経と副交感神経のバランスを整える効果などもあります。
1−3、鍼の種類

鍼治療で一般的に用いられてる鍼を毫鍼(ごうしん)といいます。日本では一般的に鍼管を用いた管鍼法が普及しています。(鍼を鍼管という筒の中に入れて、上から鍼を叩いて刺入する方法)また、ディスポーザブル鍼という使い捨ての鍼を使用する事が多く、衛生面においても安心です。

鍼自体の太さは、髪の毛程の細さが一般的で、0.1~0.5mm程度です。
鍼自体の長さは、利用頻度の高いもので、10~150mm程度です。

*鍼の効用については、
「痛みになぜ鍼灸が効くのか①」
「痛みになぜ鍼灸が効くのか②6つのメカニズム」
こちらに記載していますので、ご確認ください。

2、灸とは??

2−1、灸治療とは温熱刺激でホメオスタシスを賦活させる!?

灸療法も鍼治療同様、身体に刺激を与える事で恒常性維持機能の反応を導き出し、病気の治療や予防を行います。鍼治療との違いは、鍼治療が鍼の機械的刺激を与えるのに対し、灸はもぐさによる温熱的刺激を与えるということです。

温熱的刺激により、経絡や経穴に作用して関連する器官や気血の流れを調整したり、局所を温め循環を改善する効果を得る事が出来ます。

2ー2、灸治療の特徴的な3つの効果
  1. 増血作用:灸により、赤血球を増やし、血流をよくします。
  2. 止血作用:灸により、血小板の働きをよくし、治癒の促進を促します。
  3. 免疫作用:灸により、心機能を亢進させたり、血管の収縮力を増強させます。

灸治療においては、赤血球や血色素量などの血液像や、血液凝固時間の短縮、循環系に対する作用が認められ、増血・止血・免疫の3つの効果があるといわれています。この3つはとくに灸治療で高い効果が見られます。

2ー3、灸治療の2種類の方法

灸治療には有痕灸(直接灸)無痕灸(間接灸)の2種類あります。

<有痕灸>
文字通り灸痕を残す施灸で、直接皮膚の上に半米粒大の大きさの艾を置き、生体に強めの温熱刺激を与え、それに伴い生じる生体反応を治療に利用しています。
・「透熱灸」:良質もぐさを直接皮膚上の経穴や圧痛点に置いて施灸する方法。

<無痕灸>
灸痕を残さず、心地よい温熱刺激で効果的な生体反応を期待する灸法です。有痕灸の禁忌部位や小児、女性、虚弱な人などに用いられます。
・「灸頭鍼」:鍼の上にもぐさを載せ、鍼を通して灸の熱さを伝えます。
・「棒灸」:輻射熱を利用した棒灸は、痕も残らず小児などに対しても使えます。
・「台座灸」:紙製の筒の上にあるもぐさに火をつける間接灸。せんねん灸など。
・「隔物灸」:もぐさと皮膚の間に置くものにより異なった効果をもつ隔物灸。

3、手技療法とは?

3ー1、手技療法とは素手のみで施術を行う事

鍼灸や漢方薬、器具や薬などを使わず、素手のみで施術を行なうことを手技療法といいます。患部を手でさする「手当て」がその原型とされ、マッサージやあんまもその流れをくむ手技といわれます。1947年には法律によって、あんま・指圧・マッサージ、および柔道整復・理学療法を業務として行う場合、国家資格が必要となりました。

カイロプラクティックや整体、リラクゼーションなどは、すでに一般的な手技療法ではありますが、国家資格がなく、日本においては無許可手技療法であるため、あんま、マッサージ、指圧を表示しての施術はできません。(そのため、メニューにはボディケアや整体という項目で表示しています)

国家資格の違いは以下の通りです。
「あんま指圧マッサージ師」
この3種類の手技まとめて1つの国家資格で独立開業できます。専門学校にて3年の修業と卒業が認められれば国家試験を受験できます。鍼灸治療院や訪問医療マッサージなどで、「あんま・指圧・マッサージ」という名称を使用して業務を行う事ができます。

「柔道整復師」
外傷(骨折、脱臼、捻挫、挫傷、打撲)に対して行われる治療法で、国家資格。あん摩マッサージ指圧師と同じように専門学校に3年修業と国家資格合格が必要。骨や筋を元の状態に戻す整復法、ギプスなどを使う固定法、患部の機能回復を早める後療法があります。接骨院、整骨院で受けられます。

3−2、あんま(按摩)

あんま(按摩)は中国古来の養生法で、日本には5世紀頃、朝鮮半島を経由して伝来しました。江戸時代の鎖国を経て、日本独自の形で発達し、民間療法として一般に拡がっていきます。あんまの代表的な手技には、なでる・さする(軽擦法)のほか、もむ(揉捏法)などがあり、それぞれ効果が異なります。

これらの手技は中医学の経絡理論に基づいており、気血津液を体中に巡らせて自然治癒力を高め、身体全体のバランスを整える効果をもちます。あんまには、筋肉の疲労物質の排出を促す揉捏法、血行を促進させ神経を興奮、又は鎮静に働く叩打法、血流やリンパの流れを促す圧迫法、静脈の還流を促す振戦法などがあります。

3−3、指圧

指圧は、日本で独自に発達した手技療法です。その特徴は診断即治療といわれ、手のひらや親指などで身体の表面や筋肉の異常を手で探り当て、そのままツボを刺激する事で症状の改善を図ります。ゆっくりと押し、離すという動作により、刺激を身体の深部に伝えます。

基本的な手技は、親指や手のひらで押す押圧操作です。施術者が体重をかけながら、指圧点を真上から「圧して離す」動作で身体に刺激を与え、痛みやしびれ、冷え、倦怠感などの症状を緩和させます。また、背骨のゆがみを正していく脊柱矯正、関節を曲げ伸ばして関節のこわばりを防ぐ運動操作などもあります。

3−4、マッサージ

オイルなどを手につけ、基本的に四肢の先端から心臓に向かって施術します。静脈の働きを助け、血液とリンパ液の巡りを促す効果もあります。緊張をほぐす意味でも施術され、直接肌に施術します

3−5、その他

「吸玉」
ガラスの球体を使った中国古来の療法。指圧の押圧に対し、吸玉はツボを「吸う」ことで経絡を刺激。血行促進、リンパ液の循環改善などに効果があり、腰痛や肩こり、便秘などの治療にも用いられます。

「気功」
姿勢の調節、呼吸、意識の集中などの鍛錬を行い、身体の機能を調節・増強する健康法。健康体操として愛好されている太極拳は、動く気功といわれます。

4、漢方

4−1、漢方薬治療とは?

漢方薬を用いた治療は「湯液治療」ともいわれ、鍼灸とならび東洋医学の代表的な治療法です。漢方薬は「自然の植物や鉱石などの素材で作られた天然の生薬を、一定の割合で配合した薬で、複数の成分が相互に働きかけ、全身のバランスを整えるように構成されています」

日本では漢方薬と総称することが多いが、厳密には2種類あり、一つは「素材の性質を変えず単一で用いる生薬」のことを言います。もう一つは「生薬を原則に沿って組み合わせた漢方処方」を指します。患者の証に合った方剤を処方することから「オーダーメイド治療」ともいわれ、日本でも一般化しつつあります。

漢方薬は、複数の生薬を配合していますが、各生薬にはそれぞれの味や性質があり、作用や関係する臓腑も異なります。生薬は、相互に協調して作用を補強する一方、副作用を抑制したりと、有効性が高まるように配合されています。

これらの有効成分は、まず六腑で消化・吸収され、生薬の性質により関係のある五臓へと導引され、さらに五臓から経絡を通じて全身に行き渡ります。長い年月で得られた治療経験によって、有効性の低い処方は淘汰され、副作用の少ない、有効な漢方薬のみが、現在でも使用されています。

<漢方薬が身体に効くメカニズム>
1、漢方薬の成分が、六腑で体内に吸収されます
2、各生薬の性質により、関係している五臓に成分が取り込まれます
3、各臓腑から経絡を通じ全身へと作用します
4、有効成分が身体のバランスを整え、自然治癒力を高めるように作用します

つまり、漢方薬とは「自然由来の動植物を加工した生薬を組み合わせたもので自然治癒力を高め、全身のバランスを整える働きを持っているのです」

5、まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は、東洋医学の治療法について、鍼灸、手技療法、漢方についてお伝えしました。

東洋医学は、このようにあらゆる治療法でホメオスタシス・自然治癒力を高めていけるため、東洋医学の魅力の一つです。何より、鍼灸あん摩マッサージ指圧はこれらは全て国家資格という事をご理解いただけると嬉しいです。よく整体しているんだよね?とひとくくりにされてしまうことがあるので。。。

それでは、また!!

 

関連記事

  1. 経絡・経穴(ツボ)とは?

  2. 五臓六腑とは?

  3. 気・血・津液とは?

  4. 陰陽五行論について

  5. 東洋医学の診断・診察となる「病因」と「四診」のメカニズム

  6. まずは東洋医学を理解しよう!!