普段何気なく使っているツボも、ただ単純にそこを押せば、何々が効くといったことだけではありません。路線図で例えれば、経絡は路線で、ツボは各駅にあたります。そしてその路線も始発・終着駅があるように、経絡では内臓から手足の指先、そして他の路線へと繋がっています。
今回の記事では、そんな経絡とツボについて以下の内容をお伝えして行きます。
- 経絡について
- 正経十二経脈(経絡の流れ・繋がり)
- 経穴(ツボ)について
- 各経絡の図、経絡の不調に伴う症状について
目次
1、経絡とは?
1−1、「経絡」とは「気・血・津液の通路のこと」
「経絡」とは、「気・血・津液の通路のこと」で、身体のすみずみを巡り、身体のすべての機能を調整・維持しています。
「気・血・津液」は、経絡を通って臓腑、組織、筋肉、皮膚など身体の中を循環して身体に栄養を与え、その機能を調節します。また、各臓腑にある気も経絡を通って循環するため、臓腑に変調があるときはその反応が経絡上にあらわれます。
このように、「身体の中と外を結ぶ経絡があるため、身体内部の臓腑の異常を把握し、鍼灸などで治療する事が可能」となっています。
1−2、経絡の主な働き3つ
1、「人体の健全な活動を維持します」
経絡は、その経絡上にある臓腑や皮膚、筋肉、骨などに「気・血・津液」を巡らせ、人体の健全な生理活動を維持します。
2、「外邪の侵入など、疾病に関与します」
外邪は体内に侵入すると、経絡を伝わって身体の奥深くまで入り込みます。また経絡内での「気・血・津液」の過不足は、身体に変調をきたします。このように、経絡は病気の発生にも関与します。
3、「病態に応じて治療を施します」
体表部などにあらわれた異常反応から、臓腑の変調を推測し、その状態を把握できます。また、経絡や経絡上の経穴を使って、外部から身体内部の治療を施すこともできます。
2、正経十二経脈とは?
2−1、正経十二経脈は3つの陰経と3つの陽経が流れている
正経十二経脈は、手部と足部に3つの陰経と3つの陽経(三陰三陽)が流れています。各経脈は特定の臓腑に繋がっており、治療に用いられます。
また正経十二経脈の気血の流れには規則性があり、その流れを流注と言います。経脈は中焦の手の太陰肺経から始まり、正経十二経脈が順番に連絡し合って足の厥陰肝経で一巡、再び中焦に戻ります。この十二経脈は五臓六腑、頭部、体幹、四肢など全身を相互に接続しています。
「手の太陰肺経は流れて手の陽明大腸経へ、さらに足の陽明胃経→足の太陰肺経→手の少陰心経→手の太陽小腸経→足の太陽膀胱経→足の少陰腎経→手の厥陰心包経→手の少陰三焦経→足の少陽三焦経→足の少陽胆経→足の厥陰肝経へと流れ、
また元の手の太陰肺経」に連結します。
これらの経脈は流れる方向が決まっていて、陰経は上がり、陽経は下がるという原則にしたがっています。つまり、直立して上肢を挙上した姿勢の時に陰経は下から上へ、陽経は上から下へ流れます。
そして、その接合点は、手足の末端、あるいは頭部面にあります。
例えば、手の少陰心経は手の小指先まで流れ、そこで手の太陽小腸系に連結します。
また、この経脈の流れは「臓腑の表裏関係」と密接に関連し、例えば手の太陰肺経は肺に所属すると同時に大腸とも連絡し、手の陽明大腸経は大腸に所属するとともに肺とも連絡します。
3、経穴(ツボ)とは?
3−1、経穴(ツボ)とは気が身体の内外を出入りするところ
経絡には、気が身体の内外を出入りするツボ(経穴)があり、鍼灸治療はこのツボを使って行われます。鍼灸が病気を治療、予防する効果をもつのは、経絡内で気血津液の流れが滞ったときにツボを刺激すると、それが経絡に伝わり流れを改善するからです。
また、病気にかかると気血津液の不調和や、臓腑の陰陽のアンバランスが起こり、虚実の「証」があらわれますが、鍼灸は経穴に適切な刺激を与えることで、臓腑の虚実を調整できます。ツボは、体内のさまざまな問題が表出する部位であり、一方で治療効果が上がりやすい部位でもあります。
4、各経絡の走行図と経絡に関わる病気
4−1、「肺」:手の太陰肺経
<肺の不調が経絡に波及して起こる症状>
・咳や喘鳴、息切れ
・動悸や胸部膨満感
・手掌熱感
・悪寒発熱、自汗
・上肢前面外側痛
・咽喉腫痛
4−2、「大腸」:手の陽明大腸経
<大腸の不調が経絡に波及して起こる症状>
・歯痛や首の腫脹
・目が黄色、口渇、鼻出血、咽喉が腫れる
・人差し指から肘の外側、上腕の外側から肩にかけ痛む
4−3、「胃」:足の陽明胃経
<胃の不調が経絡に波及して起こる症状>
・高熱が出てそのために精神が混迷する
・発汗が起こり、鼻血や鼻汁が出る
・口角が麻痺し、口唇に発疹が生じる
・首や咽頭が腫れて痛む
・胸、腹部から鼠径部、大腿部、足背、足の第3指が痛む
・気が+:胸腹部に発熱、食欲亢進、尿が黄色
・気がー:胸腹部に悪寒、胃中も冷え、腹部膨満
4−4、「脾」:足の太陰脾経
<脾の不調が経絡に波及して起こる症状>
・舌根部が硬直、食べれば嘔吐
・胃痛、お腹の張り
・身体の倦怠感
・身体の運動が困難
・食欲不振、動悸や心下部痛、下痢や尿閉
・全身に黄疸、不眠
・大腿部と膝の内側が腫れて冷え、足の第1指が動かなくなる
4−5、「心」:手の少陰心経
<心の不調が経絡に波及して起こる症状>
・のどや口が乾き、飲物を欲する
・心部の痛み
・目が黄色くなる
・季肋部や上肢内側に痛みが起こり、手掌に熱感と痛み
4−6、「小腸」:手の太陽小腸経
<小腸の不調が経絡に波及して起こる症状>
・咽頭が痛み、下顎部が腫れて、首が回らなくなる
・肩が抜けるように痛み、腰にも切断されるような痛み
・難聴、目が黄色、頬部が腫脹する
・首、肩、上肢にかけて激痛
4−7、「膀胱」:足の太陽膀胱経
<膀胱の不調が経絡に波及して起こる症状>
・気が逆上して頭痛、眼やうなじに激痛
・背中や腰が痛む
・痔疾、悪寒発熱、精神障害、てんかん、頭頂部痛
・眼が黄色になり、鼻汁や鼻血が出る
・うなじ、背、腰、臀部、下肢などが痛み、足の小指が麻痺
4−8、「腎」:足の少陰腎経
<腎の不調が経絡に波及して起こる症状>
・食欲不振、顔面は黒く変化
・喘鳴、咳が出てつばに血が混ざる
・視力障害、恐怖感、精神不安定
・口内の熱感、咽喉頭部の腫脹、咽頭が乾いて痛む
・動悸、心部痛、黄疸、下痢
・脊柱と大腿部内側に痛み、下肢に運動麻痺と冷感
・足底に熱感と痛み
4−9、「心包」:手の厥陰心包経
<心包の不調が経絡に波及して起こる症状>
・手掌の熱感、前腕のケイレン、腋下の腫れ
・側胸の膨満感、動悸
・顔面が赤変、眼が黄色、たえず笑いたがる
・心部痛
4−10、「三焦」:手の少陽三焦経
<三焦の不調が経絡に波及して起こる症状>
・聴力が減退し、咽喉頭が腫れて痛み閉塞する
・発汗が起こり、目尻や頬部が痛む
・耳後、肩、上肢の内、外側、肘などが痛む
・手の第4指が麻痺して動かなくなる
4−11、「胆」:足の少陽胆経
<胆の不調が経絡に波及して起こる症状>
・口が苦くなったり、ため息をよくつく
・側胸部が痛み、寝返りができなくなる
・肌肉が潤いを失い、足の外側に熱感が起こる
・頭痛、下顎や目尻が痛む
・鎖骨上窩は腫れて痛む
・腋下や首の両側に硬結ができ、汗が出て悪寒発熱が起こる
・側胸部から下肢にかけての関節痛や足の第4指に運動麻痺
4−12、「肝」:足の厥陰肝経
<肝の不調が経絡に波及して起こる症状>
・腰痛
・男:陰嚢が腫れ、下腹が痛む
・女:性器が腫脹する
・喉が乾き、顔は垢がついたように光沢がなくなる
・胸部膨満感が起こり、嘔吐や下痢が起こる
・脱腸、尿失禁、尿閉などが起こる
4−13、督脈
<督脈の経絡に波及して起こる症状>
・脊柱強直
・下腹部から心部に突き上げるような痛み
・尿閉、便秘、痔疾、遺尿、喉の乾き
4−14、任脈
<任脈の経絡に波及して起こる症状>
・男:下腹部痛、心部痛、精巣の痛み、陰嚢腫大、腰痛
・女:月経不順、無月経、帯下、性器腫脹、下腹膨満、流産、不妊、極度な腰部の冷え感
写真は全て「十四経発揮」より抜粋
5、まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、経絡・経穴(ツボ)について、それぞれの意味と経絡の流れに伴う症状などお伝えいたしました。
経絡と言われてピンとこない方も、簡単に言うと、約360近くあるツボを線で結ぶのが経絡です。また、経絡はただ身体を走行しているのではなくて、各臓腑と繋がっていて、気血津液といったものが流れる通り道となっています。そのため、約360あるツボに指圧したり、鍼やお灸をすると、その経絡上に関係する臓腑が活発になったり、鎮静したりします。そこに、ツボを使った治療が生まれているのです。
それでは、また!!