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1、男性の更年期障害とは

更年期障害は、女性だけでなく男性にも起こる症状で、原因にはどちらも性ホルモンの低下が関係しています。女性の更年期障害は、閉経前後の45〜55歳位の間に起こりますが、男性の更年期障害が起こる時期には個人差があり、男性ホルモンの低下が始まる40歳代以降、いつどの年代でも起こる可能性があります。

2、男性の更年期障害の原因

男性ホルモンは「全身に作用し、筋肉や骨を強くする、性機能を正常に保つ」などの働きがあるほか、「判断力や理解力などの認知能力を高める役割」も果たしています。このように、男性ホルモンの働きは多岐にわたるため、低下すると心身に様々な症状が現れます。男性の更年期障害に深く関わっているのが、男性ホルモンの中でもテストステロンです。テストステロンは、脳からの指令を受けて精巣で作られ、血液中に分泌されます。

3、男性の更年期障害の症状とは

男性が更年期障害になると、心身に次のような症状が現れます。
心の症状には、「興味や意欲の喪失、眠れない、イライラ、不安、憂うつ」などがあります。一方、身体の症状には「関節痛、筋肉痛、ほてり、発汗、疲れやすい、肥満、頻尿、性機能の低下」などがあります。

心の症状の中には、うつ病と共通するものがありますが、うつ病では痩せることが多いのに対して、男性の更年期障害では太るのが特徴です。男性ホルモンには肥満を抑える作用があるため、低下すると、食事や運動量など生活習慣が変わらないのに太りやすくなります。また、男性ホルモンが低下すると、痛みを感じやすくなるため、関節や筋肉に痛みが現れることがあります。

4、現代医学的検査

男性の更年期障害が疑われる場合は、まず泌尿器科を受診してください。最近では、男性更年期外来やメンズヘルス外来などの専門外来を設けている医療機関もあるそうです。

診断は、問診と血液検査によって行われます。問診では、心身にどのような症状が出ているか、性機能の低下がないかなどを確認していきます。血液検査では、男性ホルモンが十分に分泌されているかどうかを調べていきます。

5、現代医学的な治療

男性ホルモンの値がそれほど低くない場合や、症状が軽い場合は、漢方薬や症状に応じた薬を使って治療していきます。男性の更年期障害で使われる代表的な漢方薬は「補中益気湯」で、だるさや気力がない、疲れやすいなどの症状に有効で、年齢を問わず使用できます。

うつ症状や不安症状など、心の症状がある場合は、抗うつ薬や抗不安薬などを使います。また、男性ホルモンが低下すると骨が弱くなってくるため、骨粗鬆症治療薬を使うこともあります。さらに、勃起力や性欲が低下するなどの性機能に関わる症状がある場合は、ED治療薬が処方されます。

男性ホルモンの値が著しくて、症状が重い場合は、男性ホルモン補充療法を行います。保険診療で認められているのは、テストステロン製剤の筋肉注射などで、2〜4週間に一回、腕やお尻に注射します。ただ、薬と同様副作用があるため、注意が必要です。

5、東洋医学的な治療

男性も女性の更年期障害と基本同じような治療を行なっていきます。
不定愁訴の現れ方から、更年期障害を腎陰虚証あるいは腎陽虚証の病証として捉えます。

腎陰虚による更年期障害

めまい、耳鳴り、のぼせ、汗、五心煩熱(手足のほてりと胸内の不安感)、口や舌の乾き、小便黄、便秘、腰や膝の軟弱化がみられます。また腎陰虚が発展すると、肝や心に影響がおよび、肝では心煩、怒りっぽくなるなどの病証、心は心悸、不眠、多夢、五心煩熱または情志の失調といった病証を呈します。
治療では、腎を滋養して補うことを基本とし、肝陽が高ぶっている場合は肝陽を降ろし、心血虚損がみられる場合は、心血を補います。

腎陽虚による更年期障害

顔面蒼白、精神不振、寒がり、四肢の冷え、腰や膝の軟弱化がみられます。
治療では、腎の陽気を補うことを目的として、お灸などを行います。

現代医学的な鍼灸治療

現代医学的には、肩こりや頭痛などの症状に対して、筋緊張緩和を目的とした対症的な治療を行い、全体の筋緊張の緩和を通して、睡眠障害や全身倦怠感などの症状の軽減を図っていきます。

6、男性ホルモン低下を予防する4つのポイント

1、睡眠

男性ホルモンは朝に高くなり、夕方に低下するという特徴があります。これは、眠っている間に男性ホルモンが分泌されるためです。つまり、不眠症などで十分な睡眠が取れなくなると、男性ホルモンの値が低いままになってしまうので、しっかりと睡眠を取りましょう。

2、運動

運動して身体の大きな筋肉に刺激を与えると、年齢に関係なく男性ホルモンの分泌が増えることがわかっています。腕立てやスクワットなどの筋力トレーニング、駅などの階段の上り下り、早歩きなど毎日10分程度でも良いので継続することが大切です。日常生活の中に、運動する習慣を積極的に取り入れてください。

3、競い合う

例えば、ゴルフやテニス、草野球などのスポーツをして仲間と競い合う習慣をつけます。そうすることで、男性ホルモンが分泌されて、症状の改善が期待できます。また、自分を表現することで周りから認められることによっても。男性ホルモンの分泌が高まります。

4、ストレスを溜めすぎない

過剰なストレスがかかると、精巣で男性ホルモンを作る能力が落ちてしまいます。入浴や休日に遠出をして温泉に浸かる、趣味を楽しむなど、自分なりのストレス解消法を持つようにしましょう。

6、当院の治療

当院の更年期障害の治療は、主に自律神経と男性ホルモンのバランスを整えていきます。

1、全身調整をして自律神経を調整し自然治癒力を高める

更年期障害と言っても人それぞれ症状が異なるため、全身の状態をよく診た上で治療を組み立てていきます。
当院では、まず四診(問診・望診・切診・舌診)を行います。特に脈診や腹診は治療を組み立てる中でも重要な診察となり、これを行うことによって、患者様の現在の状態を東洋医学的に正確に把握することができます。

これらの診察をした結果、患者様の自然治癒力を阻害している要因も把握できるため、その阻害要因となる根本原因を取り除くためのツボを組み立てていきます。そしてまず手足のツボなどに鍼灸することで、自律神経が調整され、よりお辛い症状が和らいでいきます。逆にこの全身調整(根本治療)を行わないと元の症状に戻りやすくなってしまうため、非常に大切な治療となります。

2、お辛い症状に対して鍼灸治療を行う

治療を始める前に、頭、首、肩周りの筋緊張や圧痛部位などを確認していきます。そして疾患や症状に応じて治療をしていきます。例えば、肩こり・腰痛、またはめまいや頭痛など更年期障害はあらゆる不定愁訴が生じることが多いため、その都度症状を抑えるよう治療していきます。

3、指圧マッサージで更に血流を促していく

鍼灸治療だけでも効果は十分ありますが、鍼灸治療をした直後、こりの原因となっていた局所の筋肉は血流がよくなっており、よりほぐしやすい状態となっています。
そこで、適度な刺激で指圧マッサージを局所や全身に行うことでより治療効果が期待できます。

4、ストレッチや体操などのセルフケア

治療を終えたあとは、ご自宅や職場などでも簡単に行える、その方に合った必要なストレッチや体操などをお伝えいたします。また、治療計画に基づきどのくらいの頻度・回数の治療を行うべきかきちんとご説明いたします。

7、まとめ

女性以上に男性の更年期障害とはなかなか気付きにくいと思います。おそらく調べてみると男性ホルモンが低下している方などは以外に多いかもしれません。また、うつ病などの症状にも似ている部分があるため、見きわめるのも難しいところです。

今回女性と男性ともに更年期障害の疾患内容について記載してまいりましたが、男性も女性も40〜60歳前後になると加齢によって様々な不定愁訴に陥りやすいということがわかりました。

精神的にもショックが大きいとは思いますが、寿命もどんどん上がっている近年、人生の折り返しを迎える際は、今一度ご自身の身体に目を向け、どうかご自愛ください。もしお一人で解決できない場合は、ぜひ鍼灸治療をお受けになっていただくことをお勧め致します。