1、頭痛とは
頭痛とは、頭部に感じる痛みの総称で、表在性の痛みを除いたものと定義されています。
こうした頭痛は頭部に限局する疼痛だけでなく、頚部痛あるいは頭蓋痛や顔面痛を含めた総称として使用されます。また、頭蓋内で痛覚を持つのは血管系と硬膜の一部で、脳実質では痛みを感じることはありません。主に痛みを感じる部分は以下の通り。
<頭蓋内の痛覚感受部位>
①脳内の血管 ②硬膜 ③頭蓋外の筋肉・筋膜 ④頭蓋外の血管 ⑤三叉神経第一枝 ⑥第1,2,3頸髄神経
頭痛は大きく、一次性頭痛(機能性頭痛)と二次性(症候性頭痛)に分けられます。
一次性頭痛(機能性頭痛)は、症状自体が疾患で、適切な病歴の聴取により早期の診断が可能な場合が多く、鍼灸治療の対象となりやすいです。二次性頭痛(症候性頭痛)は、脳血管障害や脳腫瘍など生命に関わる重篤な疾患が含まれており、問診・検査などで症候性頭痛が疑われた場合には速やかに専門医に紹介します。
2、頭痛の分類
一次性頭痛は、片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛および自律神経性頭痛などあります。
二次性頭痛は、くも膜下出血・脳出血・脳腫瘍・慢性硬膜下血腫・髄膜炎などがあります。
その他の三次性頭痛では、後頭神経痛などがあります。
一次性頭痛(機能性頭痛)
片頭痛 | ・10~40歳代で女性に多く家族歴も多い。 ・頻度1~3回/月で発作性頭痛が4~72時間持続。 ・酷いと寝込む。暗い所でじっとしていたい。 ・片側・側頭部に発症。30~40%は両側。 ・「ズキンズキン」と拍動性で冷やすと楽になる ・悪心嘔吐・音や光過敏・痛む前に閃輝暗点 ・休息、飲食物、月経で誘発 |
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緊張型頭痛 | ・20~50歳代に多く性別なし。頻度は稀発~慢性。 ・持続性の頭痛で数時間~数日発症する。 ・午後から夕方にかけ悪化することもある。 ・後頭部~頚部、側頭部に締め付け感、頭重感、鈍痛。 ・精神的要因が強く関与する。 ・首や肩こりが原因となる事が多い。 ・頭痛全体の7~8割を占める。 |
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群発頭痛 |
・20~40歳代で男性多い。頻度は1~2回/年 ・群発期は1~2ヶ月毎日で同時刻など1~8回/日 ・発症は15分~数時間で深夜や早朝に多い。 ・片側、側頭部、眼窩、前頭部に激しい痛み ・目の奥がえぐられる感じで刺されるような痛み。 ・同側に流涙、結膜充血・鼻閉、多汗、眼瞼浮腫など。 ・アルコールで誘発。痛みでじっとしていられない |
二次性頭痛(症候性頭痛)☆危険な頭痛
くも膜下出血 | ・50歳代~男性に多い。突然発症する。 ・出血の程度で軽度も有る。 ・後頭部~頭全体がバットで殴られたような強烈な痛み ・吐気、嘔吐、意識障害などの随伴症状。 ・脳動脈瘤の破裂が多い ・発症後24h以上で髄膜刺激症状 |
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脳出血 | ・中年以降で日中活動時に発症。 ・突発性。出血の程度や部位により痛みなしもある。 ・後頭部~顔面などが頭重感や鈍痛。 ・意識障害や片麻痺、ロレツが回らないなどの中枢神経症状 ・頭蓋内圧亢進症状、出血部位の症状高血圧の既往 |
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髄膜炎 | ・全年齢層で性差なし。一週間以内の経過(急性) ・動揺性で後に持続性。 ・項部から頭全体が鈍痛から激痛に変わる ・頭を振ると増強し発熱、嘔吐、意識障害を伴う ・髄膜刺激症状(項部硬直・ケルニッヒ・ブルジンスキー徴候) ・細菌・ウイルスなどの感染 |
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脳腫瘍 | ・好発年齢は無く性差もなし。 ・症状は腫瘍の大きさによる。 ・起床時の頭痛で動揺性。 ・限局性で後に頭全体に鈍痛で次第に悪化する。 ・頭を振ると増強。 ・腫瘍の部位により視野欠損、難聴、運動障害、言語障害など。 ・局所神経症状や頭蓋内圧亢進症状がみられる。 |
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慢性硬膜下血腫 |
・中高年以上男性に多い ・外傷後の1~3ヶ月に発症。 ・動揺性で後に持続性。 ・悪心、嘔吐、瞳孔左右不同、認知症様症状、意識障害など。 ・酩酊~泥酔時の外傷(忘れた頃にやってくる) |
三次性の頭痛
後頭神経痛 | ・比較的高齢者で性差なし。頻度は1~2回/月。 ・発作性で間欠的、器質性は持続性。 ・片側が多く後頭部、耳の後ろに多い。 ・電撃様で表面的な頭痛。 ・吐気、嘔吐・意識障害など。 ・脳動脈瘤の破裂が多い ・発症後24h以上で髄膜刺激症状 |
(参考文献:新臨床内科学 第8版改訂版 症状からみる病態生理の基本より引用 一部改変)
3、危険な頭痛の見分け方
二次性頭痛は先程の一覧表で記載しましたが、脳の障害など非常に危険な疾患となります。
以下の頭痛のみかたSNOOPを参考にしてください。
また大事なキーワードは、「いつもと違う、突発的、最悪、増悪な」頭痛です。
SNOOP(頭痛鑑別の臨床的手がかり、当てはまる場合は精査が必要へ)
- Systematic symptoms(全身性の症状:発熱・筋痛・体重減少)
- Neurologic symptoms(神経学的症状:めまい、ふらつき、手足の麻痺や痺れ、言葉がおかしい、眼球の動きや見え方がおかしい、人柄が変わった、急にボケが始まったなど)
- Onset sudden(突然の発症:雷鳴頭痛)
- Onset after 40(40歳以降の発症)
- Pattern change(パターンの変化:いつもと違う〜痛み方、頻度、部位、程度など)
これらが当てはまらない場合は、一次性の頭痛の可能性が高くなります。
二次性の危険な頭痛なのか心配な場合は、当院へご相談いただくか、病院への受診をおすすめします。
4、当院の治療
当院の頭痛治療で、主に効果が期待できる症状は、鍼灸の適応疾患である
片頭痛・緊張型頭痛や後頭神経痛などです。その他の頭痛でも一度ご相談ください。
1、全身調整をして自然治癒力を高める
頭痛の原因や症状は人それぞれ体質や筋肉のこり具合・受傷歴などが異なるため、頭や首肩だけを診るのではなく全身の状態をよく診た上で治療を組み立てていきます。
当院では、まず四診(問診・望診・切診・舌診)を行います。特に脈診や腹診は治療を組み立てる中でも重要な診察となり、これを行うことによって、患者様の現在の状態を東洋医学的に正確に把握することができます。
これらの診察をした結果、患者様の自然治癒力を阻害している要因も把握できるため、その阻害要因となる根本原因を取り除くためのツボを組み立てていきます。そしてまず手足のツボなどに鍼灸することで、自律神経が調整され、より頭痛の症状が和らいでいきます。逆にこの全身調整(根本治療)を行わないと元の症状に戻りやすくなってしまうため、非常に大切な治療となります。
2、頭痛の原因となる頭や首、肩周りの筋肉に対して鍼灸治療を行う
治療を始める前に、頭、首、肩周りの筋緊張や圧痛部位などを確認していきます。そして疾患や症状に応じて以下の様に治療をしていきます。
・緊張型頭痛では、頭部の筋肉の他、首や肩周りの筋肉が過緊張して循環不良を起こしている場合が多く存在します。そのため、首は僧帽筋や頭・頚板状筋、頭半棘筋、胸鎖乳突筋など、肩周りは僧帽筋、肩甲挙筋、肩甲骨周囲筋などを治療部位として選択していきます。正しい筋緊張の部位やツボへ鍼灸治療を行う事で、筋緊張が緩和し、脳への循環が改善されるため、頭痛症状が和らいで治癒に向かっていきます。
・片頭痛では、頭痛が最も発症しやすい側頭部の側頭筋や片頭痛の発生機序が主に三叉神経血管説が有力であるため、三叉神経を目標とした眼窩上切痕部や耳周りのツボなどを選択していきます。また、循環系、自律神経機能を調整する目的で治療を行う場合もあります。主な疼痛局所である側頭部などの鍼刺激により、発作の誘発や増悪を抑制していきます。
3、指圧マッサージで更に血流を促していく
鍼灸治療だけでも効果は十分ありますが、鍼灸治療をした直後、こりの原因となっていた局所の筋肉は血流がよくなっており、よりほぐしやすい状態となっています。
そこで、適度な刺激で指圧マッサージを局所や全身に行うことでより治療効果が期待できます。
4、ストレッチや体操などのセルフケア
治療を終えたあとは、ご自宅や職場などでも簡単に行える、その方に合った必要なストレッチや体操などをお伝えいたします。また、治療計画に基づきどのくらいの頻度・回数の治療を行うべきかきちんとご説明いたします。
5、まとめ
頭痛で来院される患者さんは、大半の方がスマホやパソコンを長時間してしまう方が多く、また過労や人間関係など精神的なストレスによって自律神経が乱れ発症されている方が非常に多いのが現状です。特に頭痛で悩まれている方は女性に多く、首や肩のコリがヒドくストレートネックやいかり型、なで肩になってしまっています。
当院の治療の流れでもご説明しましたが、頭痛の原因は多くは首や肩周りの筋緊張です。日頃から長時間同じ姿勢をして作業したり、身体を冷やしてしまったり、夜更かしなどによって睡眠時間を削ってしまったり、、とおそらく頭痛になる環境が原因の一つかもしれません。
頭痛は危険な身体の警告信号だと捉え、無理のない生活や身体に負担のかからない環境づくりにもぜひ取り組んでみてください。