目次
1. 五臓六腑とは?
1−1、五臓六腑について
「五臓六腑に染み渡る」
「五臓六腑」という言葉を聞くとこのフレーズを浮かぶ方は多いのではないでしょうか?
よく臨床の場で「東洋医学で診断すると、あなたの現在の身体の状態は、「肝」が異常をきたしています」この様に説明したりします。でも患者さんは、「先生私は、肝臓が悪いんですか?」といった返事が大半返ってきます。
実際はそうではありません。
「五臓六腑」といっても内臓の事以外に、東洋医学では定義が広く各臓器についてそれぞれ現代の西洋医学とは違った意味や機能を持っています。 中医学の五臓六腑は、解剖学的に同じものでも、考え方や機能は現代医学の内蔵とは全く違うのです。
内臓を単なる身体の構成するものではなく、「生理的・病理的な現象、精神活動の中心」と考えます。
「五臓」は、「六腑の働きでできた精気(栄養物)を貯蔵する臓器」で、
「六腑」は「飲食物を運搬し、その運行中に消化吸収、選別する臓器」とされています。
つまり五臓は貯蔵、六腑は消化器といった役割を担っています。
これからその五臓六腑のそれぞれの機能について説明していきます。
2. 五臓六腑の機能について
臓腑の間には、それぞれ表裏の関係があり、臓と腑が一つずつ一対になって五行の一行に属しています。「肝は胆」「心は小腸」「脾は胃」「肺は大腸」「腎は膀胱」という様に各々対になっています。
これらの表裏関係にある臓腑は、経脈(ツボの通り道)で繋がっており、臓腑の変調などお互いに密接に関わりあっています。例えば、「腎の故障は膀胱の病変と結びつきやすく、肺の異常は大腸の異常を招きやすい」とされています。
五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
五臓 | 肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 |
六腑 | 胆 | 小腸 | 胃 | 大腸 | 膀胱 |
五主 | 筋 | 血脈 | 肌肉 | 皮毛 | 骨髄 |
五気 | 風 | 暑 | 湿 | 燥 | 乾 |
五色 | 青 | 赤 | 黄 | 白 | 黒 |
五味 | 酸 | 苦 | 甘 | 辛 | 鹹 |
五官 | 目 | 舌 | 口 | 鼻 | 耳 |
五志 | 怒 | 喜 | 思 | 憂 | 恐 |
五神 | 魂 | 神 | 意 | 魄 | 志 |
五液 | 涙 | 汗 | 涎 | 涕 | 唾 |
五華 | 爪 | 面 | 唇 | 毛 | 髪 |
(図は五行表の一部抜粋)
2−1、「肝」・「胆」の働きと異常による症状
<肝の主な働き>
- 血を貯蔵し、全身に流れる血の量を調節。
- 気・血・津液の運行を円滑にする。
- 精神を安定させて、自律神経の働きを調節して体調を整える。
- 栄養と代謝、骨格筋の調整、運動能力のコントロール
<胆の主な働き>
- 肝と表裏関係
- 胆汁を蓄え、小腸に分泌して消化を助ける
- 決断力を主る
肝・胆の異常による症状
<身体的症状>
- 目のかすみ、充血、めまいや頭痛
- 月経異常、貧血、じんましん
- 食欲不振、消化不良、下痢、耳鳴り
- 筋力が落ち、手足のケイレン、爪が薄くなり割れやすくなる
<精神的症状>
- 神経過敏・イライラして怒りっぽくなる
- ぼんやりして無気力になる(抑うつ気分)
<胆の働きが異常になると・・・>
- 口が苦い、黄疸、耳鳴り症状などが現れる。
2−2、「心」・「小腸」の働きと異常による症状
<心の主な働き>
- 全身に血液と栄養を運ぶ
- 意識・思考・睡眠をコントロール
- 体温や発汗の調節
<小腸の主な働き>
- 心と表裏関係
- 消化吸収を行い、主に水分を吸収する
- 栄養分は全身へ、不要なもののうち固形分は大腸へ、無用な水分は膀胱へ送る。
心・小腸の異常による症状
<身体的症状>
- 動悸や息切れ、胸の痛み
- 顔が赤く染まり、熱っぽさを感じる
- 顔面のツヤがなくなり、顔面蒼白になる
- 下や口にできものができる
- いつもより汗が異常に出る、寝汗をかく
<精神的症状>
- 集中力低下、物忘れがひどくなる
- 高揚感や楽観的になる、パニック発作など精神錯乱
- 夜眠れない、眠りが浅い、夢を多く見る
<心の異常が小腸に伝わると・・>
- 下痢や排尿時の痛みがでてくる
- 食欲減退、嘔吐、腹部の膨満感
2−3、「脾」・「胃」の働きと異常による症状
<脾の主な働き>
-
消化吸収機能をコントロールする
-
免疫機能を正常に保つ
-
血管から血液が漏れないようにする
- 気血を生成し運搬する
<胃の働き>
- 脾と表裏関係
- 胃に入ってきた飲食物を消化し、小腸に送る
脾・胃の異常による症状
<身体的症状>
-
消化機能がダメージを受け、食欲不振、消化不良、吐き気、膨満感など生じる。
-
免疫機能が低下し、疲れやすく、浮腫みやすい。
-
出血傾向で皮下出血や月経過多、血尿、血便、子宮出血など生じやすくなる。
-
筋肉が弱ったり、萎縮したりして、脱力感が出たり、四肢がだるくなったりする。
-
味覚が鈍くなる、唇の赤みやツヤがなくなる。痩せて血色が悪くなる。
<精神的症状>
-
ささいな事が気になり、クヨクヨと思い悩む。
-
抑うつ状態に陥る
<脾の異常が胃に伝わると・・>
- 消化不良で腹痛や下痢などを起こしたり、口内炎や口臭を発生させる
- 便秘や胃痛、嘔吐など
2−4、「肺」・「大腸」の働きと異常による症状
<肺の主な働き>
-
呼吸機能の調節を行う
-
気血の運搬と津液の排出を調節する
- 皮膚を正常に保ち免疫機能を担う
<大腸の主な働き>
- 肺と表裏関係
- 消化物から余分な水分を吸収して便を作り、排泄する
肺・大腸の異常による症状
<身体的症状>
- 咳や痰が出たり、息切れや呼吸困難、喘息、胸の痛み
- 水の流れが滞り、むくみや排尿障害がおこる
- 鼻では、鼻水、くしゃみ、鼻詰まりが出て、風邪をひきやすくなる
- 皮膚では、乾燥によるかゆみや肌荒れ、発汗異常が起こる
<精神的異常>
-
悲しんだり悲観的になりやすい
-
気分が落ち込みやすくなる
<肺の異常が大腸に伝わると・・>
- 下痢や便秘
2−5、「腎」・「膀胱」の働きと異常による症状
<腎の働き>
-
体内の水分代謝を調節
-
呼吸機能や気の調節
-
精を蓄え成長・生殖機能をコントロール
<膀胱の働き>
- 腎と表裏関係
- 余分な水分を吸収・排泄し、腎の水分調節を助ける
腎・膀胱の異常による症状
<身体的症状>
-
むくみ、咳や息切れ、喘息、皮膚の乾燥
-
性欲低下・不妊症・インポテンツ・排尿困難・頻尿・失禁
-
歯や骨がもろくなり、膝や腰のだるさ痛み
-
耳鳴りやめまい、聴力低下
-
髪が抜けやすくなったり、白髪が増えたりするなど老化が進む
<精神的症状>
-
恐れたり怖がったりする
-
忘れっぽくなる
-
根気がなくなったりする
<腎の異常が膀胱に伝わると・・>
- 尿の停滞、尿失禁
3、まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は五臓六腑のそれぞれの働きと弱った時の症状について、それぞれ説明いたしました。
自分が悩んでいる症状がよく当てはまる臓腑があれば、その臓腑を補う必要があります。どの臓腑が自分にとって異常傾向なのか一度じっくり読んで参考にしてください。
それでは、また!